偏差値の高い学校に通う子の中には、しばしば「親から勉強しなさいと言われたことがない」「子どもに勉強しろとは言わなかった」という家庭が存在します。こうした家庭はやはり親も子も地頭がいいから、なんにもしなくても高い学力を持つことができたのでしょうか?
いえいえ、実はあえて子どもに「勉強しなさい」と言わない家庭には、子どもが勉強したくなる「仕掛け」があったのです。
その仕掛けこそ「子どもの話を聞く」こと。
なぜ子どもの話を聞くと、学力が上がるのでしょうか?
今回は、子どもの話を聞くと学力が伸びる理由と、そのために親が身につけたい「聞く力」についてご紹介します。
目次
親が子どもの話を聞くと、子どもの精神が安定する

東北大学と仙台市が行っている「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」において、仙台市に住む小中高生を7年間追跡調査したところによると、家の人に話をしっかり聞いてもらっている子は学力が高い傾向があることが明らかになりました。
この理由として、「しっかり話を聞いてもらえる」ことで子どもの心が安定し、自己肯定感が自分の将来への夢や希望といった意欲につながるからだと考えられます。自分の将来に期待をしていない子どもは、自分への投資ともいえる学習に対し、高い意欲を持つことができません。
逆に言えば自己肯定感を育てることに重点を置けば、子どもは学習に対し高い意欲を持ちやすくなります。
「忙しいから無理」はNG! 親が心がけたい「聞く」工夫

子どもの話を聞くと、子どもの自己肯定感アップから学習意欲のアップにつながることがわかりました。でも、なかなか子どもの話に耳を傾ける時間の確保は難しいものです。では、実際に子どもの話を聞いていた家庭では、どんな時間に話を聞いていたのでしょうか?
食事の時間を利用する
- なるべく家族全員で食卓を囲み、今日あった出来事を聞く
- 食事中はテレビをつけないようにする
- 一緒に料理を作ったり、一緒に洗濯ものをたたみながらまったり話す
- 食後にテレビを見たりゲームをしたりしながら話す
お風呂の時間を利用する
- お風呂は一緒に入り、一日の出来事の話を聞く
移動時間を利用する
- 登校と出勤の時間を合わせ、一緒に歩きながら話をする
- 親と一緒に外出し、移動中や店内で話をする
- 塾の行き返りの車内で話を聞く
どんな話を聞けばいいの? 必要な時間はどれくらい?

東大生へ行った親子コミュニケーションの調査によると、親子の会話の中身は質問や相談ばかりではなく、雑談も多かったことがわかっています。必ずしも子どものためになる話をする必要はなく、子どもに付き合う、寄り添うという態度が子どもの心の安定に必要不可欠なのです。
また時間も、1日10分で子どもの心が安定することがわかっています。「忙しくて子どもとのコミュニケーションがうまく取れない」というお母さんに、1日10分子どもと遊ぶ時間を作ってもらったところ、子どもの心が安定したという調査結果があります。
ちなみに、東大生へのアンケートによると、「小学生時代に親が勉強を見てくれた」割合は42%、半数以上の親は子どもの勉強は見ていませんでした。
まとめ
子どもの学力向上に欠かせないのは、子どもの自己肯定感を育てることです。そのためにはまず、親が子どもの話に耳を傾けて、子どもに関心や愛情を持っていることを示すことが大切です。
「うちの子、勉強が苦手かなあ」といお子さんをお持ちの親御さん、夕食時の10分、お風呂の10分、なんでもいいから1日10分、何かをしながらでもいいので子どもの話を聞いてあげましょう。
あ、でもバラエティやクイズ番組を一緒に見ながら、というのならともかく、親が「ネット見ながら」「スマホしながら」など、子どもに意識が向いていない状態で話を聞くのはあまりおすすめできません。子どもが「うちの親は自分に関心がないな」と、冷めた気持ちになってしまうからです。