福山といえば、公立の中学校がよくないので公立回避で中学受験が盛んなエリアとして知られています。子育てする場合にも、まずは小学校より中学校の学区を重視せよと言われるほど。実際のところはどうなのでしょうか?
福山市在住、小中学生がいるメンバーに学区の小中学校の様子についてアンケートを取ってみました。内訳は西部2人、中心部2人、南部2人、北部1人、東部2人の計9人。※1
目次
小学校はどこもそれほど荒れてはいない

「賃貸の多いエリアは荒れる」「子どもの多い学校は学級崩壊しやすい」といった噂がありますが、アンケート結果を見た限りでは賃貸住宅が多いエリアでも、生徒数が多い学校でも荒れている様子は見られませんでした。
小学校に関しては「この学校はよくない」というものはないようです。
ただ、伝統的に荒れている学校というものはありませんが、「その年のその学年だけ」というように、ピンポイントに荒れることはあるようです。
中学校は学校による?中学校が荒れやすい理由
中学校に関しても「普通」という回答が最も多かったものの、伝統的に荒れている学校もいくつか見受けられました。もちろん荒れている学校でも、荒れている子はごく一部で、ほとんどの子が普通の中学生です。とはいえ、そのごく一部の荒れた空気が伝播して雰囲気が荒み、生徒に影響が出ているのも事実。
実はこの傾向は福山市に限ったことではありません。
なぜ小学校ではごく普通の生徒たちが中学に進学した途端、荒れてしまうのでしょうか?
学級崩壊を起こす理由は規律意識の低下
全国的に学級崩壊が問題になったころ、荒れるクラスと荒れないクラスの違いについて分析が進められました。その結果、学級崩壊を招くかどうかは「子どもの規律意識」にあることがわかったのです。
規律意識とは、ルールを守ろうとする意識のこと。
規律意識が低下してくるとクラスが荒れやすくなります。制服を着崩してはいけない、チャイムが鳴ったら着席しなくてはいけない、提出物を期日までに出さなくてはいけない。そんな学校生活を送る上で守らなくてはならない「当たり前のルール」をみんなが守らないようになれば、今まで守っていた子もばかばかしくなって守らなくなります。真面目にやっていてもいいことはなんにもないし、ルールを破ったからって、教育現場において現在は懲罰的なことは厳禁ですから、言葉による注意程度で、目に見えるペナルティがあるわけでもない(ように中学生には見えます。実際は内申点などに影響します)。
「みんな守ってないものを、自分だけ守るなんてばかばかしい」というわけです。
中高生になると、なぜ規律意識は低下するのか
実は日本の中高生はアメリカ、韓国、中国の中高生に比べ「大人に反抗する」「学校をずる休みする」「過激なファッションをする」などの項目では、かなり寛容であることがわかっています(日本青少年研究所調べ・2004年)
一般的に小学生のうちは比較的規律意識が高いのですが、何がきっかけになって中高生の規律意識は低下するのでしょうか。

◆地域とのつながりが薄く、行動範囲が広がる
以前のような地域社会とのつながりが薄くなり、近所は子どもの頃から知っている人だらけという状態ではなくなりました。また中高生となると行動範囲が広がり、自分のことを知らない人と一緒にいる機会が増えたり、遠くに行くこともできるようになります。つまり「知っている人に見られているから、悪いことができない」ということが少なくなっていることが、規律意識の低下を招いているのです。
◆規律意識の基準が曖昧で、個人の価値観が優先される傾向
欧米や中国・韓国などでは宗教観念が規律意識に大きな役割を果たしていますが、日本人の規律意識は「集団」の中にあって、明確な基準があるわけではありません。その集団そのものの規律意識が低下すれば、属する人たち全員の規律意識に影響を与えます。
赤信号、みんなで渡れば怖くない、です。
現在は個人の価値観が優先される傾向があるため、集団の規律意識もまた低下傾向にあります。
◆誰が学級崩壊を引き起こすのか?
小学生の間は何をするにしても大人に頼らざるを得ないため、大人の目が届いていました。しかし中高生になると、大人を頼らなくても行動ができるようになるので大人の目が届きにくくなること、個人価値観を優先させる傾向があることから、規律意識が低下しやすくなります。
この集団の中に、他人に攻撃的な「俺様」タイプの子がいると荒れた空気が伝播しやすく、クラスのモラルハザードを招いてしまうのです。
また、俺様タイプの子は大人の指導は聞き入れないため、荒れた状態はなかなか改善されないという悪循環に。
うちの学区の中学校は荒れている?雰囲気のチェックポイント
学校が荒れているかどうかについては
- 通学時間に通学路を歩いてみて中学生の雰囲気をチェック
- 制服の着こなし
- 学校や学校近くの公共施設の駐輪場での自転車の並べ方
- 運動会を見に行く
- 学区内の家庭の利用率が高いスーパーでの、児童・生徒・保護者の様子
などから確認することができます。
とはいえ「年による」ケースも多く、見に行った時は雰囲気がよくても来年度以降も雰囲気がいいままかというと、必ずしもそうではないのが公立の小中学校の悩ましいところ。
荒れた学校からの復活!秘訣は「大人」にあり
荒れた学校からいい雰囲気の学校へ変貌を遂げた中学校もあります。
北部にある某中学校は、数年前まで荒れていたものの現在は一致団結して、運動会・文化祭・合唱コンクールなどのイベントに取り組めるようになったとのこと。そのきっかけは校長(学校)とPTAが奮起して、学校をよくしようと取り組んだ成果だといいます。
具体的には、
- 学校が生徒の活動をこまめに写真に記録、校内に貼り、生徒の活動を評価する
- 校内で連続して毀損事件が起きた際には、PTAがすぐに防犯カメラを設置するなど、問題へ迅速に対応
- 保護者が地域内の見回り活動を行う
上でも紹介しましたが、大人に「見られている」という意識は、規律意識の維持に効果があります。もちろん監視するだけではなく、大人が子どもを信頼すること、行動を評価することもセットでなければ意味がありません。
公立の中学校の雰囲気をよくするには何が必要?

今まで見てきたように、中学生以上の子どもの規律意識を保つためには「大人の目がある」ことを意識させることが大切です。
そのためには、保護者自身が地域活動、学校活動に参加することが大切だと言えます。
とはいえ、今のPTAや地域の役員といえば、「不公平感・やらされている感・負担の大きさ」から多くの保護者から敬遠されるものです。
しかし、学校活動に保護者が関わらない学校は教育の質の低下を招きやすいのは事実。
多くの学校が荒れたとしても学年やクラスなどピンポイントなのですが、伝統的に荒れている学校は、保護者や地域が学校活動へ関わろうとする意識が低く、かつ学校も地域や保護者に期待をしていない→学校の質の低下、という伝統が出来上がっているのかもしれません。
アメリカでは地域・学校活動はすべて保護者のボランティアで支えられています。できる人ができることをやるため不公平感・負担の大きさに関しては解消。やらされている感は、人(あるいは文化)によるかもしれませんが…
いやいややっている人がいないため、非常にいい雰囲気の中で活動ができるのだそうです。
日本の地域活動やPTAもこんな雰囲気なら、学校の雰囲気もよくなりそうですよね。
規律意識の高い子が多い学校を選ぶのもアリ
公立が荒れるか荒れないかは巡り会わせによるところが大きいので、「荒れるかもしれない学校はいやだ」という場合は、初めから規律意識が高い子が多い学校を選ぶというのもアリです。
とはいえ、私立や国公立の中高一貫であっても、PTAや保護者会がないわけではありません。
どこの学校に進学しても、保護者は学校と連携していこうという意識は必要でしょう。

参考
福山周辺の中高一貫校と偏差値
71 広大附属福山
69 広大附属三原
64 市立福山、近大附属福山(難関進学)
56 暁の星女子、近大附属福山(文理進学)
54 盈進
52 英数学館、銀河学園、金光、清心(岡山)
(トライ教育情報センター及び家庭教師のエージェントを参考に作成)
※1 福山市在住のwebライター・グループ
PTAのあり方については過渡期を迎えており、福山市内でも学校によっては役員の負担軽減・運営の効率化など、改革が行われています!