秋の味覚、「柿」。
通りがかった大きな家のお庭に、たわわに実った柿の木! …その味を想像。
残念ながらうちには柿の木がないわ、と思っていたら、たくさんとれたご近所からおすそ分け! 収穫の秋って、ステキな季節ですね。
さて、昔から、「柿は体に良い」と言いますが、それはどんな「良いこと」があるのでしょうか。
また、「干し柿」好きな人は多いですが、柿を干したら、栄養成分はどんな風になっているのか、気になりますよね。
それにこの頃、柿を冷凍するとうまい! と評判ですが、「冷凍柿」って、どういう風に食べるのか、ちょっと気になりますよね。
だいたい、冷凍したら、柿の栄養成分ってどうなるの!?
そんな気になる柿の栄養を、栄養士の視点からご紹介します。
柿の気になる栄養とは? 主な成分とはたらきを解説!
それでは、柿を食べると、どんな栄養素が摂れて、体にどんな良いことがあるのか、主な成分とそのはたらきについて、解説していきましょう。
柿は、まだ固いとき、しっかりかじって食べないといけませんよね。
そのことからもわかるように、まず、「食物繊維」が多いのです。
食物繊維は、便通をよくするために欠かせないものとしてよく知られるようになりましたが、消化器官の機能を促進したり、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促したりなど、私たちの体の中で、影ながら大切なはたらきをしてくれています。
そこで、食物繊維を含んだ野菜や果物をしっかり摂ることで、胃腸のはたらきを助けてあげることができます。
便通は、便のかさが足りないこともひとつの原因で、食物繊維はその基材としても意味があるので、便秘で悩んでいる人は、ぜひ積極的に摂りましょう。
また、柿は、他の果物と同じように、水分を除くと、「カリウム」やビタミン類が豊富に摂れますが、その中でも、特に「ビタミンA」と「ビタミンC」を多く含んでいる果物なのです。
カリウムは、ナトリウムやカルシウムと同じ、ミネラル成分の一種で、体の中では細胞の中にあり、細胞の外側にあるナトリウムと相互的にバランスを保ちながら、体水分や血圧などを調節する役割をしています。
また、余分なナトリウムの排出を促すのにも必要で、神経や筋肉の働きにも関わり、人間が生きるために、とても重要な成分です。
カリウムが不足してくると、細胞が元気をなくし、ナトリウムの排出もできにくくなり、腎臓に負担がかかってしまいます。
そして、ビタミンAですが、これは、目に良いビタミンとして、よく知られていますよね。
ビタミンAは、視力だけでなく、成長、生殖作用や、感染予防などの免疫力にも関係していて、発がんを抑えるはたらきも!
また、抗酸化作用も持ち、老化やお肌の健康にも関係していますよ。
また、ビタミンCは、体の中のさまざまな「代謝」に関係していて、「風邪予防に良い」といわれるように、免疫力を向上させる効果があり、ビタミンAと同じく、抗がん作用もあります。
さらに、美容の世界でも注目されるように、コラーゲンの生成や保持の作用もあるのです。乾燥が気になる季節ですし、これは見逃せませんよね。
こういった栄養素がたくさん含まれていることからも、柿が、昔から大切な食べ物として、世界中で重宝されてきたことに頷けますね。
干し柿がうまい! 栄養成分はどうなっているの?
柿には、甘柿と渋柿とがありますよね。
渋柿には、タンニンという成分が、「水溶性」の状態で含まれていて、口に入れた時、唾液などの水分に溶けることで「渋み」を感じます。
そのため、渋柿は、そのままではあまりに渋くて食べられませんが、「渋抜き」の作業をすると、渋みはなくなり、甘く「食べられる」柿になります。
「干し柿」にすることも、渋抜きのひとつの方法です。
これは、「渋み」の原因である水溶性だったタンニンが、干し柿を作る途中で、柿内にできたアルコールなどの他の成分とくっつくことで、不溶性にすることができるからなのです。
生柿は、80%余りが水分ですが、干すことにより24%くらいまで減ります。(七訂 日本食品成分表より)
その分、可食部がぎゅっと濃縮されていて、糖度も上がってとても甘くなっています。干し柿の白い粉は糖分の結晶なのです。
全体が小さくなって濃縮された分、干し柿は、効率よく柿の栄養を「いいとこどり」できるのも利点です。
ただし、ビタミンCは、ほとんどなくなってしまいますから、柑橘類など他の食べ物で補給するといいでしょう。
柿を冷凍できるって本当? 栄養はどうなるの?
柿を置いているうちに柔らかくなってしまった場合は、冷凍保存するのがおすすめです。
果物も、何でも冷凍できるわけではありませんが、「完熟した」柿は、冷凍できるのです。
まだ固い柿だと、解凍して食べる時に水っぽくなり、甘味も今ひとつでおいしくならないので、冷凍保存には向いていません。
冷凍保存には、触って柔らかいなと感じる位になってからが適しています。
お好みの柔らかさになってから、冷凍しておきましょう。
冷凍した柿は冷凍庫から出し、しばらくして半解凍くらいになったら、スプーンですくって食べましょう。なんともおいしい柿のシャーベットがいただけますよ! しかも、より甘くなっています。
また、冷凍では、ビタミンCもなくなりませんし、この冷凍によってもタンニンが変化するので、「渋抜き」の効果もあるのです。
なお、渋抜きが目的の時は、皮をむいてから冷凍する方がいいので、ラップなどで包んで冷凍庫に入れておきましょう。2~3日冷凍すると渋が抜けます。
簡単に渋抜きもでき、しかもおいしくいただけるなんて、一石二鳥でうれしいですね!
まとめ
秋になると食べたくなる果物といえば、「柿」!ですよね。
それに、柿は、とても栄養があり、体にいいといいます。
しかし、どんな栄養があって、どんないいことがあるのかも、知りたいですよね。
そんなわけで、今回は、柿の栄養について注目し、主な成分やそのはたらき、そして干し柿や冷凍柿についても、栄養成分がどうなっているのか、など解説しました。
柿は常温では2~3日ですぐに柔らかくなってしまいますから、上手に保存して、お好みの食感でおいしく食べられるようにしたいですね。
そのまま、フルーツとして食べるもよし、料理にもいろいろ使えて、彩りにもなる柿。さて、次はどんな食べ方にしましょうか。
執筆:naomi101(栄養士)