1990年10月4日、木曜日。台風が3つも来る中、京都・奈良へ修学旅行に出かけました。
到着した新大阪駅は大雨で、私たちが乗るはずだったバスは交通事故に巻き込まれ、9時過ぎには新大阪に到着していたにもかかわらず、お昼過ぎまで新大阪で足止めを食らいました…。大慌てで1日目の予定のいくつかをキャンセルし、奈良を駆け抜けた修学旅行1日目。法隆寺は雨でしたが、東大寺では雨が上がり、少し傾いた太陽がつやつやと大仏殿を照らしていたのを今でも覚えています。
さて、台風にまつわる疑問をごそっと集めてみました。台風来てんなーというときのおつまみにどうぞ。
熱帯低気圧と温帯低気圧ってどう違うの?
そもそも低気圧・高気圧って何? ですが、地球の大気は横(水平方向)だけでなく縦(垂直方向)にも移動しています。熱い味噌汁をのぞくと、じわじわと味噌が対流しているのが見えますよね。あれと同じ。大気もぐるぐる循環しているのです。
低気圧というのは、空気が空に向かって上がっている場所をいいます。
逆に、空に上がった空気が下りてくる場所のことを高気圧といいます。
熱帯低気圧は、温められた海水がどんどん蒸発して空に立ち上りまくることで生まれます。立ち上った水蒸気は空の上で冷やされるため、スポット的に上空に冷たい部分ができます。温かい空気である水蒸気はそこをめがけてどんどん上っていくため、強い上昇気流が生まれ、その規模が大きくなると地球の自転の影響を受けて渦を巻き始めます。これが熱帯低気圧。風速が17.2m/s を超えると台風と呼ばれるようになります。
温帯低気圧は冷たい空気と温かい空気がぶつかり、渦をまくことでできる低気圧。冷たい空気と温かい空気のぶつかりあいなので、前線ができるのが特徴です。熱帯低気圧は温かい空気だけでできているので、前線はありません。
なので、名前は一文字違いだけどまったくの別物なんですね~。
台風は合体することがあるの?
台風が同時多発することは珍しくありませんが、さて、台風って合体してオニ台風になったりするんでしょうか?
台風は合体しません。(勢力が弱まった台風を巻き込むことはある)
なぜ合体しないのかというと、それぞれが巨大なエネルギーを持っているため、近づくと反発しあうからです。ただし、台風同士が近づくとお互いに干渉しあい、いつもと違うルートを通る現象が発生します。これを「藤原の効果」といいます。平安貴族みたいな名前ですね。1921年にこの現象を発見した藤原咲平(中央気象台所長)にちなんでつけられました。
藤原効果には6つの型があります。
- 相寄り型 弱い方が吸収される
- 指向型 片方がもう片方のまわりをまわる
- 追従型 後を追いかけていく
- 時間待ち型 1つ目が東側を、時間を置いて2つめが西側を北上
- 同行型 同時に並行移動
- 離反型 お互いが離れていってしまう
台風の動向は気圧配置、偏西風などの影響を受けるため、同時多発した台風の進路を読むのは至難の業。キョドる台風がどう動くかは直前になるまでわからないので、各局の気象予報士が予報を外したからといって責めてはいけません。
今までで一番気圧が低かった台風って?
台風の強さを表す一つの目安に「中心気圧」があります。気圧が低い=周りの空気を巻き込む力が強い、ということで中心気圧が低いものほど大きなパワーを持っているということ。
気象庁によると、現在のスタイルで統計を取り始めた1951年以降、日本に上陸した時の中心気圧の低さランキングは
順位 | 名前 | 上陸時気圧 (hPa) |
上陸日時 | 上陸場所 |
1 | 第二室戸台風 | 925 | 1961年9月16日09時過ぎ | 高知県室戸岬の西 |
2 | 伊勢湾台風 | 929 | 1959年9月26日18時頃 | 和歌山県潮岬の西 |
3 | 台風13号 | 930 | 1993年9月3日16時前 | 鹿児島県薩摩半島南部 |
4 | ルース台風 | 935 | 1951年10月14日19時頃 | 鹿児島県串木野市付近 |
5 | 複数 | 940 |
統計前だと
室戸台風 911.6hPa 1934年9月21日(室戸岬における観測値)
枕崎台風 916.1hPa 1945年9月17日(枕崎における観測値)
参考:https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/ranking/air_pressure.html
今までで一番死傷者が多かった台風って?
こちらも気象庁にデータが残っています。
死亡 | 行方不明 | 負傷 | |||
伊勢湾台風 (昭和34年台風第15号) |
昭和34(1959)年9月26日 | 4,697 | 401 | 38,921 | |
室戸台風 | 昭和9(1934)年9月21日 | 2,702 | 334 | 14,994 | |
枕崎台風 | 昭和20(1945)年9月17日 | 2,473 | 1,283 | 2,452 | |
洞爺丸台風 (昭和29年台風第15号) |
昭和29(1954)年9月26日 | 1,361 | 400 | 1,601 | |
カスリーン台風 | 昭和22(1947)年9月15日 | 1,077 | 853 | 1,547 |
参考:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/6-1.html
伊勢湾台風は群を抜いて多いですね。
ちなみに母によると「新聞の一面に水没した家と、がれきにつかまって濁流を漂う人の写真があった」とのこと。ただし、情報源が新聞だけなので、それがどんなにすごい台風だったのかさっぱりわからなかったらしいです。
世界に目を向けてみると、1970年バングラディシュを襲ったサイクロン・ボーラはデルタ地帯の標高が低い島々を高波が襲ったことで、少なくとも20万人以上が犠牲になりました。
今までで被害総額が一番大きかった台風は?
日本の台風の被害総額を損保支払額順に並べると
1位 1991年 台風19号 5680億円
2位 2004年 台風18号 3874億円
3位 1999年 台風18号 3147億円
91年の台風19号は、東北地方のりんごに大損害を与えたことから「りんご台風」とも呼ばれますが、広島人としては宮島の社殿が壊れた台風というイメージが強いです。
2004年の台風18号は山口が大停電し、中国電力が大変そうでした。(←仕事で取引があった)停電対応なら91年の方が大変だったようですが。あとやっぱり宮島の社殿が壊れた。風が強く、目の前で信号機が落ちてきたり、電飾つきの看板が降ってきたりと個人的に怖い思いをした台風です。
99年の18号は記憶がありません、なんでかな…。
ちなみに、2005年アメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナは1900人以上、被害総額は1250億ドルでした。
台風の右側と左側、どちらが強い?
右側です。
右側は反時計回りの勢いがそのまま流れ込んでいるので、左に比べたら右側のほうが雲の厚み・風の勢いが強め。
進路が台風の目より右側になりそうな場合は強風や大雨に備えましょう。
左側だから安心というわけではありません。
気圧を表す「ヘクトパスカル」ってなに? 昔はミリバールって言ってたよね
ヘクト=100 の意味。キロ=1000、ギガ=10億、なんかと同じ接頭詞。
パスカル=圧力の単位の一つ。「パスカルの原理」を見つけた17世紀の学者・ブレーズ・パスカルに由来。
「ヘクトパスカル(hPa)」は、圧力の単位ですが、気圧以外では使われない単位。1960年、国際度量衡総会で「ひとつの量にはひとつの単位」のルールが合意され、気圧を表す単位はヘクトパスカルになりました。
が、日本では1945年以降、やはり気圧を表す単位だった「ミリバール」を使用していたため、一般的にはミリバールが浸透。1973年、国際標準化機構が「ヘクトパスカルを使いますねー」としたため、国際的にヘクトパスカルへの切り替えが進み、日本では1992年12月1日より、ミリバールからヘクトパスカルへ移行。
ちょうど中学生だった私は「入試ではミリバールって書かないように」と先生から指導を受けたものです。「ヘクトパスカルってなんなの、パスカルって人物名?」と思ったものですが、実際に人の名前だったんですね。